身体の虚弱状態フレイルの種類

フレイル

フレイルとは、加齢のために身体機能を支える恒常性維持機能の低下により、ストレスにあらがう力が低下し健康障害に対する脆弱性が高まった状態とされています。

従来は、虚弱や脆弱と呼ばれていたものが、2014年に老年医学会が「フレイル」と呼ぶことを提唱しました。

1980年代以前はフレイルを「ADL障害があり、様々な基礎疾患を抱え、在宅療養が難しい状態」と捉えていましたが、1990年代になり「生理的予備力が低下し、障害に陥りやすい状態」と定義されました。(Buchner DM,et al: Clin Geriatr Med ,8;1-17,1992)

フレイルの種類

フレイルは身体的な側面に注目が集まり多くの研究がなされてきましたが、

フレイルには身体的問題(身体的フレイル)、精神心理・認知的問題(精神心理的フレイル)、社会的問題(社会的フレイル)があり、それが相互に影響し合って負の健康状態につながると最近は考えられています。

フレイルは「高齢期に生理的に身体の予備機能が低下することでストレスに対して身体の抵抗力が弱くなり、生活機能の障害,要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態になり、

筋力の低下などにより今まで出来ていた運動や生活動作の俊敏性が失われ、転倒しやすくなるような身体的な問題だけでなく、認知機能の障害、うつなどの精神・心理的な問題,経済的な困窮などの社会的問題により引き起こされると言われえています。

身体的フレイル

身体的フレイルは「複数の原因や誘引によってもたらされる医学的な症候群で、筋力や持久力の低下、生理機能の低下を特徴とする、要介護や死亡に至る脆弱性が増した状態」と定義しました。

 

身体的フレイルの中核要因は、サルコペニア、多剤内服、低栄養とされており、

栄養摂取量低下→体重減少→サルコペニア→基礎代謝量低下→総エネルギー消費低下というサイクルと、サルコペニア→筋力低下→歩行速度低下→活動量低下→総エネルギー消費用低下のサイクルがあるとされています。

精神的フレイル

精神心理的フレイルは、「身体機能が低下した高齢者でみられる可逆性の認知障害で、放置すると認知症への進展リスクが高い状態」と定義し、身体的フレイルと認知機能障害(CDR=0.5)が共存することと、認知症ではないことを要件としています。(櫻井孝,Modern Physician,35;827-830,2015)

認知的フレイルは、現在の定義では、身体的フレイルに加え軽度認知障害を認めた場合とされています。(Kelaiditi E,et al. J Nutr Health Aging ,17:726-734,2013)

具体的にはCDR(clinical dementia rating)が0.5の場合で、CDRが1~3で、認知症の場合はには認知的フレイルとは判断しないとされています。ただし、現在、定義の見直しが行われています。

社会的フレイル

社会的フレイルは、身体的フレイルや精神心理的(認知的)フレイルより定義、概念、診断基準の整備が遅れていて、以下のようにいくつか報告がありますが、統一された明確な概念、定義、見解は現時点で存在されていません。

社会的フレイルとは、生存期間中に1つ以上の基本的な社会ニーズを満たすために重要な資源を失う恐れがある状態から失った状態の連続体としたものがあります。(Bunt S,et al ,Eur J Aging,14;323-334,2017)

「社会活動への参加や社会的交流に対する脆弱性が増加している状態」を社会的フレイルと定義し、具体的項目を「外出頻度が1日1回未満の閉じこもり傾向」および「同居家族以外との交流が週1回未満の社会的孤立状態」としたものがあります。(藤原佳典,Geriatric Med ,55 ;23-25,2017)

生活機能に応じた社会参加活動として、①就労、②ボランティア活動、③自己啓発(趣味・学習・保健)活動、④友人・隣人などとのインフォーマルな交流、⑤要介護期のデイ(通所)サービス利用の5つを挙げています。(藤原佳典,Geriatric Med ,55 ;155-158,2017)

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