深呼吸と鬱症状について

深呼吸と聞くと、どこか「気休め」のように聞こえるかもしれません。しかし、医学的・生物学的な視点で見ると、深呼吸は私たちの脳と神経系に対して、非常に強力な「リセットボタン」として機能します。

うつ症状に悩むとき、体と心に何が起きているのか、そしてなぜ呼吸が助けになるのかを整理しました。


1. 脳と自律神経の「非常事態」を解く

うつ症状や強い不安感があるとき、私たちの体は常に交感神経(戦うか逃げるかの神経)が優位になり、脳が「今は危険だ」という信号を出し続けています。

  • 浅い呼吸: 脳に「今はパニック状態だ」というフィードバックを送ってしまいます。

  • 深い呼吸: 唯一、自分の意思でコントロールできる自律神経のスイッチです。深く息を吐くことで副交感神経を刺激し、脳に「今は安全だ」という信号を強制的に送ることができます。

2. 「今、ここ」に意識を戻す

うつの状態では、意識が「過去の後悔」や「未来への不安」へと飛び火し、思考が止まらなくなることがあります。これを「反芻(はんすう)思考」と呼びます。

深呼吸を行う際、空気が鼻を通る感覚や、お腹が膨らむ動きに集中すると、散らばっていた意識が**「今、この瞬間」**の体に引き戻されます。これはマインドフルネスの基本であり、脳の疲れを軽減する効果があります。

3. セロトニンと脳の血流

一定のリズムで深い呼吸を繰り返すことは、心の安定に欠かせない脳内物質**「セロトニン」**の分泌を活性化させると言われています。また、酸素が脳に十分に行き渡ることで、重苦しかった思考に少しだけ隙間が生まれます。


効果的な「4-4-8呼吸法」のヒント

うつ症状が重いときは、難しいことを考えるのも億劫(おっくう)なものです。まずはこれだけを試してみてください。

  1. 4秒かけて、鼻からゆっくり息を吸う。

  2. 4秒間、息を止める。

  3. 8秒かけて、口から細く長く、ため息をつくように吐き出す。

ポイント: 「吸う」ことよりも「吐き切る」ことに意識を向けてください。体の中の淀んだ空気をすべて出し切るイメージです。


深呼吸は、うつ症状を劇的に「治す」魔法ではありません。しかし、荒れ狂う心の波を少しだけ静め、**「今はとりあえず、息をしているだけで大丈夫」**と思える時間を作ってくれます。

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